限定復活「名画座ライフ」

上映が終わると場内は拍手に包まれた。二十数年前、映画館だった頃の場所の記憶を思い出させるように。

古町7のイベントスペース「田から屋」は、かつて「ライフ」という映画館だった場所。1985年に閉館し客席などは取り払われているが、天井が高く吹き抜けになっているところなど、映画館だった頃の痕跡が今も残っている。ここで今日、映画『東京物語』などが上映された。

東京物語』は言わずと知れた小津安二郎監督の不朽の名作なのだが、かつて映画館だった空間を使って(映写機ではなくプロジェクターだけど)スクリーン投影で観られる機会もなかなかないだろう。1953年製作というから、今からちょうど60年前の作品だ。

前半部分では、当時の暮らしぶりがリアルに描かれているのが興味深かった。扇風機はあるけどエアコンは当然まだないから、夏は窓も引き戸も開け放して暮らしている。服装は、まだ和服と洋服が半々くらい。東京と尾道はSLの夜行列車に乗って十数時間…などなど。この60年で暮らし方が大きく変わったのを感じる。

日本が先進国へ仲間入りしたのは、いつなのだろうと考える。東京五輪の頃になるのかな。1953年は先進国を目指し高度成長をかけ上がろうとした頃か。今のマレーシアはちょうどこの頃の感覚に近いのかもしれない。もっとも今のマレーシアにはインターネットもスマートフォンもあって、当時の日本とはかなり違うけど。

そして急展開を迎える後半部分。淡々としながらも心に染み入るようなラストシーンに、場内拍手。主催の方も涙ながらに「両親に連れられ映画を観て、帰りにラーメンを食べて帰ったのを思い出した」と語ってて、思わずじんわり。僕自身まわりの人に対して生きているうちにいろいろちゃんとしようと思いましたよ、はい。

やはり名作と言われるものはちゃんと観ておくべき、と思った田から屋の映画上映会。今後も隔月1日に開催していきたいとのこと。期待したい。