被災地の「過去」と現在

furumachi2013-05-06

国道6号線に立つ「過去の津波浸水区間」の標識。思わず、え、もう「過去」なの?と思ってしまったけど、もしものために必要な情報なのだろう。

ゴールデンウィークは、妻の実家のある福島県の大平洋側へ行っていた。震災から2年が過ぎ、穏やかな内海の広がる松川浦も風光明媚な景色を取り戻しつつある。旅館やお土産物店などが並んでいた通りも、少しずつ活気が戻ってきた。そういう意味では「過去」になりつつあるのかもしれない。

でも場所によっては、震災後と何も変わっていない。かつて家屋が軒を連ねていた海沿いの集落。カーナビが郵便局や派出所があったことを教えてくれるが、今は荒れた道路の跡と野原が広がるだけ。そこは2千人ほどが暮らす集落だったというが、跡形もなく消えてしまった。かつての様子を知らなくても心が揺さぶられる。

ここに暮らしていた住民はどこへ行ってしまったのか。仮設住宅か、それとも遠く避難しているのか。ここに戻って来れる日は来るのだろうか。そもそも津波が襲ったこの場所に、集落を再建することはできるのか。家が津波でなくなっただけでなく、土地まで価値がなくなってしまうことになるのか…。

僕は地元の人ではない。本当の思いや感情はちゃんと理解できていないし、過去も未来も共有できていない。ただ海沿いの集落を巡って思うのは、感情的には過去をすぱっと線引きできるものではないだろう、ということ。国道に立つ、情報としての「過去」とは、きっと何か違う。