2年前の忘れられない感情

しばらく比較的温かい日が続いていたから、今日の寒さはカラダにこたえる。そういえば2年前の今日も、太陽が出ているのに寒い日だった。テレビに映る津波の映像も雪がちらついてて、切なかった。

地震が多くて津波も起こる場所とは聞いていたけど、2年前の大震災には言葉を失った。福島県の大平洋側、海岸から2キロほどのところに妻の実家がある。連絡は2日間つかなかった。今日の冷たく乾燥した空気は、そわそわというか、ぞわぞわというか、じりじりというか、あの日のごちゃ混ぜな感情を思い出させる。

津波は、実家までは来ていないと信じたい。でも停電はしているだろうし、もしかしたらガラス窓も割れているかもしれない。寒いだろうに、どうやって夜を過ごしているだろう。僕らはこんなに温かい部屋にいていいのだろうか。地震の翌日はちょうど土曜日。行こうと思えば行ける。行かなくていいのか?

でも僕らが行けば、もれなく子どもたちもついてくる。道だってまともに通じているか分からないのに、子連れで行けるのか? 行ったところで邪魔になるだけでは? ガソリン不足も伝えられるなか、クルマで行ってガソリンは足りるのか? そわそわ、ぞわぞわ、じりじり…。

妻が比較的冷静だったこともあり、結局行動には移さなかった。今にして思えば行かなくて正解だったと思うけど、その時の無力感といったら…。停電や断水で相当の間不便な生活を強いられたと、後になって聞いた。すぐ迎えに行って、しばらく新潟で暮らしてもらえばよかった、と今でも思う。

その時の状況をあまり詳しくは聞いていない。飼っていた犬が頭上から屋根瓦が次々落ちてくるのを見て、すっかりトラウマになっておとなしくなってしまったと、笑い話のように言うくらい。津波の直撃は避けられ(見えるところまでは来たけど)、親戚も含め人的被害がなかったのは、本当に運がよかった。

2年が過ぎ、壊された風景も整えられ始めている。当初心配した放射線量もかなり下がってきた。忘れてしまうことも多いと思う。でもあのそわそわ、ぞわぞわ、じりじりした感情と、無力感は忘れることができない。犬もまだおとなしいままだ。