都会の「スキマ」に迫る一冊

furumachi2012-06-14

古い街並みが好きなら行ってみるといいと言われ、行ってみたのは学生時代。時代劇にタイムスリップしたような街並みには驚いた。料亭の玄関には赤やピンクの明かりに照らされて、女性がちょこんと座っている。あまりの異様な光景になぜか怖くなって、逃げるように帰ってきたんだっけ。

でもこの本によると、男性の多くはこの街のことを聞かれると同じように答えるらしい。井上理律子さんの『さいごの色街 飛田』は、大阪の「取材禁止の街」飛田新地のナマの姿に迫ったノンフィクション。飛田新地については、このサイトが詳しい。よくこんなに写真が撮れたものだなぁ。

・日本最大級の遊郭の建物が今も150軒以上残る「飛田新地」に行ってきました-gigazine
http://gigazine.net/news/20120521-tobita-shinchi/

横浜もかつて黄金町のガード下に違法風俗店が並んで、多くのアジア系女性が客引きをしていた。高度成長を経たこの時代、都会のスキマに戦後の混乱期のような街があることが不思議でたまらなかった。カメラを向けると怖い人に追いかけられると聞いたので、近づこうとは思わなかったけど。

想像はしていたけど、飛田新地で働く女性の現実はやはり厳しい。貧困が貧困を生む。まさに貧困の連鎖。働いても働いても搾取され続ける構造がそこにはある。料亭の経営者は「人助けしている」と言うが、何のことはない、これは「貧困ビジネス」だ。何とかならないものかねぇ、橋下市長。

僕が飛田から逃げ帰った時、駅まで続く長いアーケード街がどうしようもなく寂れ切ってて、どこまでも抜け出せないような気がして怖かった。大阪は人情味あふれて好きな街だけど、高い生活保護受給率や犯罪件数の多さも大阪の抱える現実だ。抜け出さなければならない課題は多い。

横浜の黄金町は違法風俗店が一掃されて、もう数年が過ぎた。当時の黄金町のナマの姿に迫ることはもうできない。僕も井上さんみたいに、不思議でたまらない思いを抱えてスキマの街に迫ればよかったのかな。…いや、やっぱり怖かったもんな。