未来をよくするヒント

濃密で刺激的な内容に圧倒された。混迷を深め先の見えない(見ないふりをしたい)世の中だけど、明日を、1年後を、そして10年後をよくするためのヒントがたくさん盛り込まれている。

ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2011」で7日に行われたという世界的な工業デザイナー、奥山清行氏の基調講演。直接見たわけではないけど、ありがたいことにWebマガジンの「GIGAZINE」がほぼ全文を書き起こしてくれたおかげで、この刺激的な内容に触れることができた。

◇いつ来るか分からない15分のために常に準備をしているのがプロ、デザイナー奥山清行による「ムーンショット」デザイン幸福論 - GIGANINE
http://gigazine.net/news/20110908_moonshot_design_cedec2011/

まず明日をよくするヒント。

「日本人は団体力がない」と聞くと意外な感じもするけど、個人ではレベルの高い日本人が、5人集まると「幼稚園みたいなもんでまるでまとまらない」という。日本人は仕事も会議の最中も黙って何も言わない。議論しながら物事を進めるのに慣れていないということか。たしかにそうかも。メンバーが本当に何を考えているか知るのに「飲みニケーション」が必要とかって、いかにも日本の文化だ。

議論しながら、というといきなりは難しいけど、「報告・連絡・相談」の手前のような話でもお互い声掛け合って情報共有しながら仕事をするだけで、チームとして創造力を上げることができると思う。これなら明日からでもできそうだ。

1年後をよくするヒントになるかも、と思ったのは「ブランド商品とコモディティ(日用)商品」のあるべき姿の話。

ブランド商品の理想的な姿はルイ・ヴィトン。30万円のかばんから、1万円の財布、犬や猫の首輪やキーホルダーまで、同じノウハウ、同じ素材を使っていろんな商品展開をしてライフスタイル全体を提供することで、ディスカウントしなくてもマーケットに入ってくる人を増やしている。

一方、コモディティ商品の理想形はiPhone。アップルはただハードウェアを売るのではなくて、まず音楽をダウンロードで売るインフラを作って、それでiPodからiPhoneiPadと揃えていき、さらにその先に何があるのか、という全体の仕組みを売っている。デバイスは安くても、全体のエクスペリエンスで稼ぐという考えだ。

世の中デフレだけど、自社の製品やサービスが価格競争の渦に巻き込まれないために、「ブランド商品はライフスタイルデザイン、コモディティ商品はエクスペリエンス・デザイン」を目指すべきという考えは大いに役に立ちそうだ。

最後に10年後をよくするヒント。

UAEアブダビ郊外では、原油国自ら石油のなくなる未来を想定して、石油に頼らず二酸化炭素を出さないスマートシティの建設が進んでいる。2013年にも完成するこの未来都市では、マイカーと公共交通の間を埋める6人乗りの自動操縦の車を3000台配備して、9万人の人たちを自動操縦だけで動かす実証実験をもう既に始めているという。

エネルギーと交通は、今後世界中で解決しなければならない大きな問題。これらを解決することができるとしたら、このような未来都市を震災からの復興が急がれる東北に作ってもいいように思う。

未来を見るにはアブダビへ行くのがいいのか…。いや、その前に山形市にある奥山氏のデザインショップに行ってみたくなったなぁ。