歴史絵巻と原発災害

furumachi2011-07-23

この街に来るようになって、10年ちょっと。ようやくここがどういう街なのか、少し分かった気がした。

福島県相馬地区で千年以上にわたり行われている「相馬野馬追」を初めて見た。といっても、今年は震災と原発災害の影響で、メーン行事の神旗争奪戦や甲冑競馬などは中止。神事を中心に規模縮小して行われることになっている。

見てきたのは、甲冑に身を包んだ騎馬隊が相馬市の街を練り歩く騎馬行列。騎馬隊総大将は相馬藩主の末裔が担うそうで、行列を高いところから見下ろしてはいけない、行列の途中を横切って横断してはいけないなどの決まりが今も脈々と語り継がれている。積み重ねた歴史の長さを感じる。

甲冑に身を包み旗を掲げた騎手たちが、20頭以上の馬に乗り行列する様は迫力だ。今年は中止された神旗争奪戦には500頭もの馬が参加するというから、その迫力は想像を越える。まさに歴史絵巻。相馬藩主の子孫は年に一度このお祭りにだけ相馬に帰ってくるという。地元の人の思い入れも大きい。

行列を終えて相馬中村神社に戻ると、勝利を祝う乾杯と宴が始まる。「今年はこういう形で行うことになったが、来年もこの社で無事こうして集まれれば」という主催者の挨拶。来年は全ての行事を行いたい、ではなく、規模縮小してでも継続したいというところに、先の見えない原発災害へのもどかしさを感じた。

何年かかってでも、などと言わずに、ぜひ来年は完全な形で歴史絵巻を堪能したい。部外者の僕が思う以上に、地元の人はそう思っているはず。でもそれを口にすることすらできないこの現状。原発災害が地域に与えた影響は計り知れない。