変わりゆくグロい街

「悪臭を放つ黄昏、ガード下の定食屋からは玉葱を炒めるにおい、高架に沿った路地からは娼婦たちのすえたミルクのなかに香水をぶちまけたようなにおい、それらがむしむしする空気のなかで満ちたり引いたりしながら押し寄せてくる」

今読んでる柳美里の「ゴールドラッシュ」の舞台となっている横浜・黄金町。違法風俗店が高架下にびっしり並び、夜ともなればピンクや紫の明かりが灯る店先にアジア系の女性が客引きをする…。戦後まもなくの混乱期か東南アジアのような風景が、平成の日本に存在していたのである。

前回も書いたように新潟市はこういう危なさや怪しさを持つ街はほとんどないに等しい。だから大学時代に横浜に暮らし、黄金町と「メリーさん」には驚かされた。すごい街に来たと思ったもんだ。20年近く前の横浜はまだこのような怪しさのある街だった。

街は変わっていく。数百軒とも言われた黄金町の違法風俗店はここ数年で一斉に摘発され、空き家となった風俗店の一部はアート拠点として新たな活用がされ始めている。赤レンガ倉庫など港湾エリアや中華街も観光地化が進み、健全な雰囲気になっていっているようだ。いいことなんだろうけど、横浜らしさが薄まっていくようで少し寂しい気もする。

あまり健全になってしまうと「ゴールドラッシュ」や「探偵濱マイク」みたいな作品が生まれにくくなってしまうんじゃないかな?と心配になる。伊勢佐木町京急日ノ出町駅を結ぶ福富町辺りを歩くと、そんな心配は無用と思うくらい今も十分怪しいんだけど。

それにしても「ゴールドラッシュ」、すごいストーリーだ。ただならぬ街を舞台にしているだけはある。さて、続きを読もうっと。