イタリアの背中が見えた20年

イタリアとサッカーといえば、20年ほど前、ローマの下町にある教会の前の広場で見かけた、サッカーに興じる子どもたちを今も思い出す。夕方、薄暗くなりかけた広場で、彼らはゴツゴツした石畳の上で実に器用にボールを操り、広場の真ん中にある噴水の階段を見事なパスワークで上り、噴水の縁にまで上り切ったのだ。

20年前といえば、日本でもJリーグが発足しようとしていた頃。でも子どもたちの動きを見て、日本がイタリアに追い付くなんて時は果たして来るのだろうか?と思ったものだ。改めてネットで調べてみたら、たしかにこの写真の広場だった。この7段ほどある階段と噴水をピッチに見立てて、サッカーに興じていたのである。

・Santa Maria in Trastevere fountain.jpg
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Santa_Maria_in_Trastevere_fountain.jpg

そんなイタリアの背中をとらえ、肩にまで手がかかった?と思えた20日朝の好試合であった。コンフェデ杯日本対イタリア戦。前半が終わった時点では、日本がこのまま勝つのでは?とさえ思った。結果的には後半で逆転を許し、一瞬とらえたと思った肩はするりと抜け出て行ってしまったが、朝からいい夢を見させてもらった。

・イタリア 4-3 日本
0-1 本田圭佑(前21分)PK
0-2 香川真司(前33分)
1-2 デロッシ(前41分)
2-2 オウンゴール(内田)(後5分)
3-2 バロテッリ(後7分)PK
3-3 岡崎慎司(後24分)
4-3 ジョビンコ(後41分)

20年前のイタリア旅行では、ローマに続きナポリに向かったのだけど、ナポリもサッカーで燃えていた。いや、比喩的な表現でなく実際に駅前の街路樹が燃えていた。

ナポリへは特急列車で約2時間。車内には数人の若者グループがいて、ラジオのサッカー中継を聴きながらビールで盛り上がっていた。でもだんだん盛り上がりが不穏な空気へと変わっていく。叫び声を上げるわ、ビールの缶を車外へ投げるわ…。そして到着したナポリ中央駅の駅前はほとんど暴動と化していた。

どうやら地元ナポリのチームがひどい負け方をしたらしい。すぐ近くのホテルに逃げ込んで、そのままそこに泊まることにしたのだけど、夜遅くまで半暴動は続いていた。でも道一本隔てた夜の市場街は普通に営業していたから、この騒ぎも日常なのだろう。サッカーに熱くなる国を目の当たりにした学生時代の旅であった。

あれから20年。もしかしたらあの時トラステヴェレの広場で見た子どもの一人が、イタリア代表の選手にいたのかも…なんて。そしてナポリは今も燃えるサポーターなのだろうか。いろんなことを思い出した朝だった。